税金対策

リースバックが相続対策になる理由とは?

不動産を活用した相続対策は様々ありますが、ここ数年でリースバックというサービスが注目を浴びています。
本記事では、リースバックが相続対策になる理由や注意点、他の不動産を活用した相続対策について解説します。
この記事を読むことで、リースバックの正しい知識が身に付き、注意すべきポイントを抑えた相続対策ができるようになります。
結論、リースバックは売却後も愛着のある家に住み続けたい人、遺産を預貯金で相続したい人にオススメのサービスでしょう。

リースバックが相続対策になる理由

リースバックとは、持ち家を不動産業者などに売却し得たお金で、そのまま同じ家を賃貸契約する仕組みです。
つまり住宅の所有権が、自分から不動産業者に移る為、不動産に対する相続税が発生しなくなります。
リースバックが相続対策になり理由は主に3点あります。


①相続トラブルを未然に防ぐことが出来る
②相続税の課税が減る
③収益を預貯金として相続できる

ひとつずつ解説してまいります。

相続トラブルを未然に防ぐことができる

住宅を相続する際に、相続人が複数いる場合、誰がそこに住み続けるか、親族間でトラブルになることがあります。
不動産を相続するときの具体例を1つ紹介します。

具体例A)
相続財産:不動産6000万円、預貯金2000万円
相続人:配偶者1人、子2人
※法定相続分より、配偶者は1/2、子は各1/4を相続するものとします。

配偶者も今後の生活に預貯金が必要になりますから、下記の分配になると仮定します。
配偶者:不動産3000万円、預貯金1000万円
子(1):不動産1500万円、預貯金500万円
子(2):不動産1500万円、預貯金500万円

資産評価額上は、子供にも合計2000万円が相続され、公平に1/4が分配されています。
しかし、配偶者が不動産に住み続ける場合、子供は相続された不動産を活用することが出来なくなります。
これでは、相続に不平等が感じられるため、相続トラブルが発生する原因になってしまいます。

リースバックを利用することで、不動産を売却して得た収益を、預貯金として相続することが出来る為、上記のような相続トラブルを未然に防ぐことが出来るのです。


相続対策の効果を、以下の具体例で確認してみましょう。
不動産はリースバックを利用し、評価額の70%の4200万円で売却したと仮定します。

具体例B)
相続財産:預貯金6200万円(買取価格4200万円+元々の預貯金2000万円)
相続人:配偶者1人、子2人
※法定相続分より、配偶者は1/2、子は各1/4を相続するものとします。

配偶者:預貯金3100万円
子(1):預貯金1550万円
子(2):預貯金1550万円

相続財産をすべて預貯金に変えたことにより、子供たちも遺産を有効活用できるようになりました。
また、通常の売却とは異なり、被相続人が愛着のある家に賃貸契約で住み続ける事がメリットです。

(参考:国税庁_No.4132 相続人の範囲と法定相続分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4132.htm

相続税の課税が減る

リースバックを活用することで、不動産の所有権が無くなる為、課税対象となる資産が減り、相続税の課税も小さくなります。
たとえば、マイホームの評価額が6000万円だった場合、リースバックで不動産を売却して、評価額の70%である4200万円が預貯金に変わるとします。
相続税は、マイホームの評価額6000万円ではなく、リースバック活用後の預貯金4200万円に課税されることになるため、課税対象が少なくなることが分かりますね。
もし相続人が3人いる場合、基礎控除額が3000万円+(600万円×3人)=4800万円になりますから、預貯金4200万円は非課税で相続できます。

上記の通り、資産総額としては減少しておりますが、課税対象も少なくなるため、相続税対策としては利用されることが多いです。

(参考:国税庁_No.4152 相続税の計算)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

収益を預貯金として相続できる

先述した通り、リースバックを利用すると、不動産売却時の収益を預貯金として相続できます。
相続人は、相続税の資金を捻出することに苦労せずに、預貯金からスムーズに相続税を支払えるのです。

よくあるケースでは、高額な不動産を相続したけれど、それに掛かる相続税を支払うための預貯金が足りないことです。
この様な状況では、相続人が不動産を売却して資金を捻出しますが、生前にリースバックを実施するのと比較して、相続人の負担が増える点に注意しましょう。

賃借権の相続で遺族は住み続けられる

被相続人が賃貸住宅などに住んでいる場合、貸借権の相続をすることで、同じ住居に遺族も住み続けられます。
また、貸借権の相続をすることに、地主の承諾は不要です。
よくある勘違いで、貸借権の相続をするタイミングで、貸出人から賃料の値上げや、退去希望を受ける場合がありますが、それに応じる必要はありません。

その為、被相続人は遺族にも、住み慣れた住宅に移り住む選択肢を残すことができます。

不動産を使ったリースバック以外の相続対策

これまで、リースバックについて解説しましたが、不動産を使った他の相続税対策についても紹介します。
自分にあった相続税対策はどれなのか、特徴を理解した上で、比較検討をして後悔の無い判断をしましょう。

賃貸物件を建てる

賃貸物件を建てる事も相続税対策に有効です。
物件を人に貸している場合、所有者が土地や建物を自由に使えない為、自用地として所有するよりも、評価額が低くなるからです。

賃貸住宅の評価額を計算する際は、まず借地権割合と借家権割合、賃貸割合を考えます。
借地権割合とは、土地の更地評価額に対する借地が占める割合です。
借地権割合は、土地ごとに30%~90%と定められていますが、殆どのケースでは60%~70%です。
借家権割合とは、建物の相続税評価額を計算するための割合を示し、全国一律で30%となります。
賃貸割合は、その賃貸住宅の何割が賃貸で占められているかを指します。
たとえば、10部屋あるうちの4部屋が賃貸契約されている場合、賃貸割合は40%です。

貸家建付地の評価額は以下の計算式で割り出せます。
自用地としての評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の評価額

少し複雑ですから、具体例を1つ紹介します。
具体例C)
自用地としての評価額:5000万円
借地権割合:70%
借家権割合:30%
賃貸割合 :40%

具体例Cの場合、
5000万円×(1-70%×30%×40%)=4580万円

5000万円の賃貸住宅を建てると、不動産の評価額が4580万円に減りますので、課税対象に420万円の差が生まれます。

この様に、賃貸住宅を建てることで、評価額を下げることは、1つの相続税対策になるでしょう。

マンションを購入する

マンションを購入する場合も、相続税評価額が低く見積もられるため、相続税対策に繋がります。

マンションを相続する際は、土地と建物の2軸で評価額が見積もられます。
一般的に、土地は時価の7割ほど、建物は5割ほどの価額とイメージすれば良いでしょう。

そのため、先程の賃貸マンションを建てるときと同じイメージで、預貯金で資産を相続するよりも、低い評価額でマンションを相続できるのです。

相続時精算課税制度を利用する

相続時精算課税制度とは、60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫に生前贈与をする際に、2500万円以内であれば非課税となる制度です。
2500万円を超える資産を贈与する場合、超過分には一律20%の贈与税が発生する点に注意しましょう。
また、相続時精算課税制度は贈与時の評価額を採用するため、将来的に価格の上昇が見込める不動産を贈与する際には、一定のメリットがあります。

(参考:国税庁_No.4103 相続時精算課税の選択)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm

不動産投資業を法人化する

不動産事業をしている場合、法人化すれば相続税対策をとることができます。
賃貸物件の所有を、個人から法人に移すことで、贈与税や相続税を避けられるのです。
また、法人には累進課税はありませんから、法人税は最大でも23.2%となり、不動産事業にも節税効果があります。
メリットの多い法人化ですが、赤字でも税金がかかる、会計処理が複雑化するなどのデメリットもある点に注意しましょう。

相続対策でリースバックをする際の注意点

不動産を活用した相続対策について紹介しましたが、もう一度リースバックの解説にもどります。
相続対策でリースバックを活用することにも、いくつかの注意点があるからです。

所有権がなくなるので自由なリフォームができない

リースバックでは、不動産の所有権を不動産業者に移すため、自由なリフォームができなくなります。
かつてはマイホームだった家に住むわけですから、賃貸契約に変わる事で自由に使えなくなり、ストレスを感じる人も少なくないでしょう。

家賃を滞納していると支払い義務も相続される

賃貸契約にすることで、被相続人が家賃を滞納していた場合、相続人に支払い義務も相続される点に注意しましょう。
たとえば、リースバックで不動産を売却した収益で、老後の生活費が賄えなかった場合に、家賃を滞納してしまうケースが考えられます。
遺族のために活用するリースバックですから、家賃を継続して払えるかについても意識しておきましょう。

リースバックは定期賃貸借契約が多い

実は、リースバックは定期賃貸借契約が多いです。
賃貸借契約には、普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の2種類があります。
普通賃貸借契約は、一般的な賃貸契約で採用される方式で、借り手が希望する限り、賃貸契約を更新し続けることができます。
一方で、リースバックで採用されることの多い定期賃貸借契約は、賃貸契約の更新保証が無いため、地主が希望した場合に、途中で退去しなければならない可能性があります。

もしリースバックを活用する1番の目的が、売却後も愛着のある家に住み続けることであれば、この点は大きなデメリットとなります。

相続対策をするにはサービスの比較検討が重要

本記事ではリースバックをメインに、不動産を活用した相続対策をいくつか紹介しましたが、どのサービスにもメリット、デメリットが存在します。
魅力的な点のみを意識するのではなく、自分が譲れない点も考慮した上で、適切なサービスを比較検討する必要があります。
そして、相続対策は遺族が安心して相続するために、とても重要です。
判断力のある若いうちから、必要な対策、準備を施しましょう。

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